1.ペットフードの製造について

1-4.ペットフードの加工目的と一般的製造方法

 ペットフードを加工する目的は、原料の消化・吸収を向上させると同時に、加熱殺菌により微生物汚染を防止するためです。例えば、ペットフードと家畜用飼料との大きな違いは、ペットフードはすべて加熱加工されていることにあります。
 ウエットタイプの缶詰やレトルトパウチは勿論、加熱加工処理をしていないペットフードはありません。ペットフードは、品質保持、嗜好性、経済性、用途に応じて種々のものがあり、それぞれの良さがあります。

■ 一般的優劣の例を下記に示します。

1)開封前の品質保持期間の長さ

  缶詰>アルミトレー・レトルトパウチ>ドライ>セミモイスト・ソフトドライ

2)開封後の品質保持期間の長さ

  ドライ>セミモイスト・ソフトドライ>缶詰・アルミトレー・レトルトパウチ

3)イヌの嗜好性の良さ

  缶詰>セミモイスト・ソフトドライ>ドライ

4)カロリー経済性の良さ

  ドライフード>セミモイスト・ソフトドライ>缶詰

5)現時点での容器のリサイクル実施度

  缶詰>ドライ・セミモイスト・ソフトドライ

■ ペットフードの加工方法概略

1) ドライフード

原料を粉砕・配合しエクストルーダーという加熱・加圧押出機により発泡・成型した後に乾燥・冷却して製品化します。
エクストルーダーでの加熱温度は、115〜135℃程度まで達します。原料によっては、160℃程度にまで上げるものもあります。

2)セミモイストフード

エクストルーダーを使用しますが、発泡させず成型するだけで、乾燥させずに冷却のみを行います。包装はバリアーの高い材質を使用し、脱酸素剤を使用することが多いです。
セミモイストフードには、肉を使用し肉状に見せる工夫をこらしたフードが多くあります。

3)ソフトドライフード

エクストルーダーを使用しますが、ドライフードと同じように発泡成型し、セミモイストフードと同じように乾燥させずに冷却するのみ。包装はバリアーの高い材質を使用し、脱酸素剤を使用することが多いです。

4)ウエットフード

ドッグフードは畜肉を主原料とし、キャットフードは魚肉を主原料として他の原料も混合して缶等に充填し、巻締め後レトルトで殺菌します。
殺菌の温度・時間は缶等のサイズと内容物によって異なります。
缶は、スチール缶やアルミ缶が用いられます。
缶以外のウエットフードの容器には、アルミトレーやレトルトパウチがあります。

5)粉末状フード

ペット用ミルク等の粉末状フードは、噴霧乾燥(スプレードライ)により製造されます。人用のミルクと同様の方法で製造されますが、ヒトのミルクよりペットのミルクの方がたんぱく質や脂肪等の栄養成分の濃度が高いだけお湯での溶解が難しく工夫が必要です。

6)クランブルフード

顆粒状フードの一種です。
ここでは離乳食や成長期用フードの製法についてその概略を示します。
離乳食や成長期用フードは、水やお湯等でフードをふやかして与えますので、吸水し易いように発泡したフードが用いられます。
エクストルーダーで一度発泡したフードを製造した後に、発泡した粒を一定の粒サイズに粉砕します。その粉砕した粒をクランブルと呼びます。

7)顆粒状フード

一般的には、顆粒造粒装置により顆粒を製造します。造粒装置には種々あり、粒を丸めるか網目状のスクリーンを通して粒を作り乾燥させます。
乾燥方法は流動乾燥等が用いられます。

8)ビスケット状フード

食用ビスケットと同じ製法のものもあり、食用ビスケットには砂糖と油脂(ショートニング)が用いられますが、それらを使用せず抜き型を使用してビスケットの形状で焙焼乾燥したフードが多く流通しています。

9)棒状ジャーキー

ジャーキーには様々なのものがありますが、棒状(スティック状)ジャーキーは肉等をキュアリング(調味液等に浸潤)してクッキングしながら棒状に押出した後、一定の長さに揃えて一定の水分になるまでゆっくり乾燥し包装します。