ペットフードと食品との大きな違いは、食品は一定の食材を提供するのに対して、ペットフードは一定の栄養成分を提供することにあります。
人は自身で栄養バランスを整える為の食事を選択し摂取することができますが、ペットは飼主から与えられた食事のみで栄養を摂取しなければならず、フード中に一定で安定した栄養成分を含有している必要があります。
そのため、食品の包装容器に記載される成分は、例えば「1袋中たんぱく質15g,脂質8g」の様になっていますがペットフードの包装容器に記載される成分は、「粗たんぱく質20%以上、粗脂肪8%以上、粗繊維3%以下、粗灰分6%以下、水分10%以下」の様に示されます。ペットフードは、この五成分の表示が義務づけられており、必要に応じて他の成分の表示も記載されます。食品は、その容器中に含有している栄養成分の標準的数値を示しており、含有量を保証しているものではありません。
ペットフードが%表示するのは、栄養バランスを重視しているからで、イヌ・ネコの栄養基準もフード中の栄養成分含有量を「%」あるいは「mg」、「IU/kg」で示します。さらに「以上」、「以下」で示しているのは栄養成分を保証しているとの意味で、栄養上必要であるたんぱく質や脂肪は、最低栄養含有量を保証し「以上」の表示がなされています。一方で水分、繊維及び灰分は保証値より多いとカロリーが低下したり一定の栄養を摂取出来ない恐れがあることから、最大含有量を保証し「以下」の表示がなされます。
四成分に「粗」とついているのは、おおまかな数値を示したものではなく、栄養成分の表示についての分析上の精度を示したものです。食品でもペットフードでもたんぱく質や脂肪等の分析方法はほぼ同じですが、食品の栄養成分の表示は「粗」を表示することなく示され、ペットフードは栄養成分を保証するという観点から分析上の保証精度を「粗」で示しています。食品及びペットフードにおいて、これら五成分から水分を除く四成分は、純粋な成分すなわち純粋なたんぱく質・脂肪・繊維・灰分を測定しているのではなく、同時に他の成分も測定してしています。例えばたんぱく質の分析ではアミノ酸やアミン類、脂肪の分析では脂肪に溶解しているビタミンや他の成分、繊維では酸やアルカリに溶けないケラチンのようなものを「粗」という言葉で表現しています。また、灰分の分析はペットフードを燃やして灰にし、その量を測定します。そこには純粋なミネラルの他にその酸化物を含んでいるので他の成分と同様に「粗」を冠しています。しかし、英語では灰をそのまま測定しているという考え方なので「crude」という言葉を冠せず「ash」とのみ表示しています。「粗」や「以上」、「以下」の表示は、日本独自のものではなく世界的に共通の表現方法で、英語では「crude」(天然のまま、そのままの意)で示されています。「以上」、「以下」の表示も「max.」、「min.」の表示で示されています。
ペットフードに含まれている栄養成分の含有量を保証する事柄として、包装容器にこの様な表示方法をしており、一定の栄養成分を保証している事が示されています。
また、イヌは体重1kg弱から数十kgまでとかなりの体重幅があります。従って成犬体重1kg当たりのエネルギー要求量も、成犬時の体重1kgのイヌは132kcal、10kgのイヌでは74.2kcal、60kgのイヌでは47.4kcalと大幅に異なり、飼主が自身のイヌのエネルギー必要量を理解して的確にフードの給与量を把握することは難しいことから、フードの給与量、給与回数等の給与方法の表示を義務付けしています。又、フードのカロリー表示は任意表示として行なわれています。
それゆえ飼主は、パッケージの給与表示を見てそれに合せてフードをペットに与えることにより、ペットの栄養を確保することが出来るのです。