2.ペットフードの原材料について

2-5.制限ある添加物の例

一般的に添加物は、物質によっては用途制限や使用量の制限が定められていますが、ペットフ−ドもそれらの制限が必要な物質があります。

プロビレングリコ−ル

前出の半湿潤フ−ドに保湿作用、制菌作用、カロリ−源などの目的で使用されます。プロピレングリコ−ルを与えられた犬には臨床的、血液学的影響は見られませんでしたが、猫では赤血球にハインツ小体の増加や赤血球数の変化などがみられ、キャットフ−ドに使用することは好ましくありません。米国ではGRAS物質とされています。GRASとは、Generally Recognized As Safeとしてその使用目的ごとに安全性を確認する必要のある物質をいいます。

酸化防止剤

ペットフードの原料中に油脂成分として含まれたり、嗜好・エネルギー源として使用される油脂の酸化防止やビタミンの酸化による劣化防止の目的で酸化防止剤が使用されます。
酸化防止剤には、食品添加物や飼料添加物がありますが、それぞれフードの状態や内容成分に合わせて利用されます。
猫用缶詰には、主に魚肉が使用されることから魚肉中に含まれる魚油の酸化防止目的で酸化防止剤が使用されます。ドライフードは、添加油脂の酸化防止やビタミンの劣化防止目的で酸化防止剤が使用されフードの品質を保っています。
酸化が促進すると嗜好性がおちたり、ビタミン類の劣化が起こったり、ひいてはペットの健康障害が発生する恐れがあります。ペットフードはこの為に、ペットに安全であることが確認された酸化防止剤を使用範囲内において利用し、フードの安全性確保を図っています。

エトキシキン

酸化防止剤として使用され、日・米・欧の飼料添加物として認められていますが、他の酸化防止剤との併用条件は国により若干の違いがあります。エトキシキンの使用については過去10年間論議の的になっており、FDAの規制についての変更はないものの、FDAはメ−カ−に対してエトキシキンの安全性試験結果が確定し、使用限度量が最終的に決定されるまでドッグフ−ドへの使用は自主的に150ppmから75ppmに制限するように要請しています。現在、アメリカのペットフ−ド協会では、ドッグフ−ド中のエトキシキン含量が30〜60ppmの範囲で有効性があるかどうかの試験を実施しています。

亜硝酸ナトリウム

食品で使用されている亜硝酸ナトリウムは、ペットフードの缶詰やスナック類の発色剤、保存料として使用される場合があります。AAFCOでは20ppm以下と使用限度量を定めています。

セレン化合物

平成8年7月に鹿島税関支署つくば出張所から「セレン化合物を含有したペットフ−ドの輸入については、毒物及び劇物取締法(別表1−16)に該当します。」という通知がペットフ−ド工業会にありました。ある業者が小鳥のエサを輸入するに際して、原料と添加物の内容をドキュメントに記載して当該税関に通関申請したところ、添加物にセレン酸ナトリウムの記載がありこのこのセレン化合物は、毒物及び劇物取締法によるところの劇物として取扱われ、このセレン化合物を含有するペットフ−ドも同法の対象になり輸入できないとの事でした。我国ではセレン化合物は、飼料添加物としては認められていませんが、AAFCOやFEDIAFでは飼料添加物として認められており、既に輸入されていたドッグフ−ドにもこの添加物を表示したものがあるなど、その影響は甚大と思える事態に発展してしまいました。
セレンは、微量の無機物でこれが欠乏すると食欲が低下したり骨格筋病や心筋病などになるとされています。過剰の場合には、他の動物の例では神経質、食欲不振、嘔吐、呼吸困難及び肺水腫が起こると数日以内に死亡するとしています。NRCの栄養要求量は、犬で0.11ppm猫では0.10ppmでAAFCOの基準では犬で0.11ppm最大2ppm猫の基準は0.10ppmとしています。そしてAAFCOでは、亜セレン酸ナトリウムとセレン酸ナトリウムの使用が認められ、ドッグフ−ドの最大許容量は化合物として2ppmとしています。ヨ−ロッパのFEDIAFでもこの2種の使用が認められておりますが、セレン含量は0.5ppm以下としています。
ペットフ−ド工業会では厚生省薬務局安全課毒物劇物係を通じて折衝していましたが、平成8年11月22日の「毒物及び劇物指定令の一部を改正する政令」により、同法に該当しない範囲として亜セレン酸ナトリウム0.00011%以下,セレン酸ナトリウム0.00012%以下とすることが定められました。 この様に栄養目的の添加物でも、毒物・劇物の対象になるものもあります。